「感触で感じる木」
私達が、樹木名を知ろうとする時、葉や花、果実等の特徴は、大きな手がかりとなります。しかし、冬から早春にかけての落葉樹は、葉っぱ等をすっかり落としてしまい、常緑樹であっても大木になると、光の具合で葉が上の方だけに展開していることがよくあります。このような場合、葉痕や冬芽で調べる方法もありますが、最も身近な方法として、いつでも可能な樹皮があります。樹皮のことを一般に、「木肌」とか「幹肌」などと言いますが、樹皮は死んでしまっている細胞であるにかかわらず、樹木の表面を覆って乾燥や病害虫の侵入等を防ぐ等、大切な役目を果たしています。樹皮を形状から見た場合、ものの本では、平滑・縦筋・横筋・縦裂・網裂・班剥などに分けています。アカマツやスギ・ヒノキ類のように表面が厚いものや、薄くて平らのヤブツバキやヒメシャラ、そして樹皮が剥がれるカゴノキやリョウブなどのほか、ザラザラ・ブツブツ、モコモコ、イボイボになっているものがあります。この部分は、皮目と言って呼吸の役目をしている器官です。森の中で、白っぽくて褐色の大木に手を当て、平滑でザラザラしている鮫肌「タブノキ」か? 縦筋「ムクノキ」に横筋「エノキ」。縦裂で筋ありの「スダジイ」、網裂の「ヒマラヤスギ」や「ツガ」があり。象の足の様にくびれた横筋の「コシアブラ」といたりもしますが、樹木には「若木」「成木」「老木」と生長するに従って、全く違った樹種に見えてしまうことがあります。例えば、ハゼノキの若木は平滑でザラついた感じが、成木では大きく縦裂し、老木はクスノキの様に小さな縦裂となって、ちょっと戸惑う場合があります。要は様々な感覚を使って、自分なりに慣れることでしょう。(安部 泰男)
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