「ドングリのなる木」
ブナ(山毛欅・橅)といえば、1993年に世界自然遺産として登録された白神山地が有名です。ブナは冷温林を代表する樹木で、北海道の黒松内を北限とし、南限の鹿児島県高隈山まで広く分布しています。この樹木は暑さに弱いため、九州・四国では、海抜800~900m以上でないと出現しません。福岡県内では、宝満山から三郡山への尾根筋、背振山系、英彦山、釈迦・御前岳などに見られますが、残念ながら標高597mの油山には存在しません。なのに!ブナ帯を構成する樹種が多いのは何故なのか?を考えてみました。九州の森は低地が照葉樹林で、高地はブナ林となっています。いま地球温暖化によって、ブナ林が消滅の危機にさらされています。気温が4℃上昇することにより、およそ500㎞南に移動することとなり、東京が鹿児島県枕崎市と同じ気候となるそうです。ブナ林は日本の天然林の17%に当たり、そうなると、現在のブナ林の90%が消滅すると言われています。まだ地球の温度が低かった1万年位前には、油山にもブナが存在したものと考えられます。ブナ帯に多く存在する樹木は、アカガシ、ヤマボウシ、ハイノキ、ホオノキ、タムシバ、コシアブラ、リョウブ、ミヤマシキミ、ハリギリ、シラキ、コハウチワカエデ、クロモジなどですが、これらの樹木が油山に多く自生しているからです。これは寒かった時代の名残と里山として収奪の繰り返しがあり、また落葉樹が多く林床が明るいからではないでしょうか?(安部泰男)
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