「リストラする木」
秋です。今年も落葉の季節が巡ってきました。葉の一生を鮮やかに彩る紅(黄)葉は、春の芽吹きからどんなドラマが展開したのでしょう。春から秋まで黙々と働いて来た落葉樹は、役目を終えて華やかに色づき散っていきます。樹木は夏の間が特に忙しい。葉は光合成によって作られた糖分を茎や幹に送り出し、たっぷり栄養を含んだ森の落ち葉は、ダニやミミズなど土壌動物によって分解され、樹木自身の栄養源となって来年に備えます。しかし、街角に舞い降りた落ち葉は、行き場を失ってゴミと化します。雨が降ると濡れ落ち葉、車のスリップ事故にもつながりかねません。濡れているうちはまだしも、乾燥して風に舞っている様を見るにつけ、我が人生が彷彿としてよみがえります。落葉のメカニズム、これは葉柄(ヨウヘイ)の付け根部分にリストラ層、否、葉の老化現象の離層(リソウ)なるものができ、落葉樹が生き残るための、葉を一気に落としてしまう大量リストラです。それを見て「ああ秋だなあー」と、人生のエレジーを感じるのは私だけでしょうか。秋も深まり日照時間が短くなると、葉の中のクロロフィルが分解して、紅葉はアントシアン、黄葉はカロチノイドに変化するというような理屈は抜きにして、カラフルな彩りに染まる油山の秋を楽しみたいものです。油山では、どんな樹木が色づくのか?紅葉はカエデ科、ウルシ科、ニシキギ科、ツツジ科、バラ科など、黄葉はイチョウ科、カエデ科、ミカン科、トウダイグサ科など。褐葉はブナ科、ニレ科、トチノキ科、クスノキ科などで、葉っぱのグラデーションも楽しめます。落葉樹には美しさが二度訪れる!秋の紅葉もさることながら、春の芽吹きが勝とも劣らず素晴らしい。(安部 泰男)
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