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森に集い、森を育て、森で遊び・学ぶ 森会

油山の樹木ア・ラ・カルトjyumoku

油山の樹木ア・ラ・カルト(17)<2010年5月>

春に大笑いする木

春は山が笑う!これは中国の山水画家、郭煕(かくき)の「春山淡冶(たんや)にして笑うが如し」の記述からくるものです。広葉樹がモクモクと芽吹いて行くプロセスを動的に捉え、山肌が日一日と色合いを変えていく様に、子規は「故郷やどちらを見ても山笑う」と詠んでいます。この頃の季語にも、木の芽山,木の芽晴れ、木の芽雨、若葉時、若葉風、若葉雨などがあり、かの徳富蘆花も「自然と人生」の中で、樹木の芽吹きの微妙な色の変化について、淡褐、淡緑、淡紅、淡紫などと細やかに表し、むしろ桜より美しいとまで言っています。私にとっては、「時間よ止まれ!」の季節の到来です。それもほんのつかの間、大笑いしていた山々も微笑みに変化する頃、初夏はすぐそこまで来ています。シイやカシ、カエデなどの他、意外に忘れられているのが、クスノキの葉っぱのグラデーションです。グリーン、イエロー、オレンジ、ピンク、パープルなど、微妙に異なる色の変化に興趣さえ覚えます。クスノキ(楠・樟)は、樹高25メートル以上にもなる常緑高木、葉の特徴としては、艶があって革質、葉脈は三行脈を呈し、その分岐点にちょっと膨らんだ2つのダニ室があります。初夏の頃、葉の入れ代わりで大量に落葉しますが、樹木全体に樟脳の香りがあり、防虫剤やカンフルとして利用されました。立花山のクスノキ原生林は有名ですが、油山でも「くすの広場」をはじめ、随所で観察することができます。木々の葉っぱの展開は、人の心をも美しくする。

(安部泰男)

 

 
 
 
 
 

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