「樹皮と新芽が赤い木」
今回は、森を育てる会のもう一つのシンボルツリー! アカマツです。油山のアカマツは、福岡県のレッド・データー・ブック(R・D・B)に、貴重な植物群落として掲載されています。油山以外の群落では、福智山麓西側の上野峡一帯と添田町の岩石山(ガンジャクサン)などで残存しています。アカマツを分類で見ると、植物界→裸子植物門→マツ亜門→マツ綱→マツ亜綱→マツ目→マツ科→マツ属→種名がアカマツ。学名:Pinus densiflora 英名::Japanese Red Pine 和名:アカマツ(赤松)。また、葉が細くしなやかなことから、雌松(メマツ)とか女松(オンナマツ)とも言います。裸子植物の中では、ソテツ科とイチョウ科を除き、マツ科の中にあって、葉の形や樹形から、最も針葉樹に相応しい樹木と言えるでしょう。若木から年月を経て老木になるに従い、樹冠が丸くなって落ち着いた樹形になってきます。年を取っても丸くなれない人は、アカマツにも劣るとか? アカマツ林内のハリギリやカラスザンショウも大木になると、トゲが丸くなって優しくなります。大いに心しておきたいです。私達が保全活動を行っているアカマツ林には、落葉高木のハゼノキ、コシアブラ、リョウブ、ヤマザクラ、常緑高木のクロキ、タブノキ、ヤマモモ、落葉小高木のソヨゴ、ゴンズイ、ネズミモチ、ヤマウルシ、常緑小高木のヒサカキ、イヌツゲ、落葉低木のネジキ、イヌザンショウ、常緑低木のシシャンボ、落葉つる性のサルトリイバラ、ヤマフジなどが生育し、この時期(10月中旬)の草本層には、コシダ、ウラジロ、ヘクソカズラ、ススキ、メガルガヤ、ナキリスゲ等のほか、センボンヤリノの咲き残りやササクサが沢山の種をつけていました。歩くとズボンの裾などに付着して、ちょっと困りものですが、タネを遠くへ 分布せるための植物の知恵でしょう。私は森の中を歩くことが大好きです。七十路の私よりも、ずっとずっと長生きをしている樹木達に畏敬の念を払いながら、じっと木を眺め、抱き寄せ、頬をつけ、匂いと暖かさを感じ、そっと触れてみて、木への親しみや観察力などを高めていきます。センス・オブ・ワンダー(自然の不思議さや神秘さに目を見張る感性)を記し、沈黙の春(Silent Spring)の著者で、海洋生物学者でもある米国のレイチェル・カーソンは、「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要でないと言っています。私もその説に異論はありませんし、全くその通りだと思います。しかし、樹木や野草の名前を知り、その蘊蓄などを知ることによって、散歩や森歩きがより楽しくなること請け合いです。知らなければ、森の中や街角で樹木や野草に出会っても、それは単なる木&草で終わってしまいますから ………。ところで、アカマツは薬用木としても利用されます。アカマツの葉っぱ(クロマツでも可)を焼酎につけ込んだ松葉酒は、不眠症、冷え性、神経痛、中風、貧血、滋養強壮など、薬効は実に多才であり、松脂、マツボックリ、種子、樹皮などを煎じてもよし、葉をそのまま布袋に入れて、入浴剤として使っても同様の効果があるとのこと。一度その薬効を試してみたいものです。因みに、マツの花言葉は「不老長寿」です。(安部 泰男)
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