「木偏に四季の木」
今年の夏は、殊のほか暑さが身に堪えました。滴(したた)っていた油山の樹木も粧(よそお)いの季節を迎えます。そこで、木へんに四季を綴ってみました。木へん+春=「椿(つばき)」、夏=「榎(えのき)」、冬=「柊(ひいらぎ)」と、どれもポピュラーな樹木ばかりですが、木へん+秋=「楸」は如何ですか? 音読みで「しゅう」、訓読みで「ひさぎ」となっています。「ひさぎ」とは、トウダイグサ科のアカメガシワ(赤芽柏)とノウゼンカズラ科のキササゲ(木豇豆)の古名を指します。アカメガシワは、山野など日当たりのよい場所で、普通に生育している雌雄(しゆう)異株(いしゅ)の落葉高木です。自然災害などの攪乱によってギャップが生じると、そこにいち早く出現するパイオニアプランツの1種です。別名をゴサイバ(五菜葉)とかサイモリバ(菜盛葉)とも言い、カシワ(柏)の葉と同様、食べ物を葉の上に盛って食器として利用しました。アカメガシワの命名理由は、新葉の芽出し部分が赤いことから赤芽、広い葉をカシワと言ったものでしょう。この赤い部分は星状毛に覆われ、指で軽く擦ると鮮やかなグリーンが出現してくるから不思議。6~7月に花弁のない花を付け、9~10月に褐色に熟した雌株の黒い実に、コゲラやメジロ、ツグミ、キジバト、ムクドリ、ジョウビタキなど多くの野鳥が訪れ、固くて味もなさそうな実を好んで啄(ついば)んでいます。その横のクロガネモチの赤く熟した実に、目もくれないのは何故でしょう? さて、もう一方のキササゲですが、アブラギリやイイギリなどキリと名の付く樹木同様に葉が大きく、長さ約30㎝のマメ科の豇(ささ)豆(げ)の様な実を付けますが、残念ながら油山では確認できていません。因みに、木へんに東西南北を綴ると、棟(むね)・栖(すみか)・楠(くすのき)があるものの、どんなに検索しても木+北(比はあり)がないのは……。(安部 泰男)
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