「青二才で青臭い木」
早春の森の中、木漏れ日に輝くアオキの実が美しい。艶やかな青い葉陰から覗く赤い実に春の息吹を感じます。秋には緑色だった実が、冬の寒さによって真っ赤な珊瑚玉になっています。「名は体を表す」と申しますが、アオキは1年中、葉も枝も青々していることから「アオキバ」転じて、アオキ(青木)となりました。学名は、Aucuba(アウクバ) Japonica(ジャポニカ) で、英名も Japanese Aucubaだから、まさに日本特産の植物と言えます。ミズキ科アオキ属、雌雄異株の常緑低木で、花期は3月から5月と長く、円錐花序に紫褐色の小さな花を多数つけます。花の形は小さいながらも、花弁の様な総包片が4枚あって、ヤマボウシやハナミズキによく似ています。アオキは日陰を好む傾向があり、スギ林や山の斜面、谷沿いの肥沃な土地に多く自生しているため、スギの生育を示す指標植物となっています。方言名として、ミソブタ、アオンド、オショギ、ケツネノシリフキなどがあります。そこで、アオキの世代交代の作戦ですが、野鳥達に珊瑚玉を提供しなければなりません。いかにも美味しそうな色形をしているにも係わらず、食べて呉れるのは、ヒヨドリやツグミ類など僅かです。ある日、森の中でヒヨドリが真っ赤に熟れた楕円状の実を嘴でちぎり取り、ポイと跳ね上げる様にして器用に食べていました。果実など未熟なものを「青い」と表現しますが、人間の世界でも、その人柄や考えが未熟な場合に「青二才」とか「青臭い」「考えが青い」などと言います。たとえ「あいつは青い」と言われようとも、いつまでも青々と青春していたいものですね。(安部泰男)
|