「名は体を表す木」
故事・ことわざに「名は体を表す」と言う言葉があります。「体」は物事の本質とか実体のことを言いますが、さて、樹木にも「体」を表すものがあるのでしょうか? 樹木は、地球上に2万種も存在し、日本にはその8分の1に当たる2500種が、そして油山には230種位が確認されています。樹木の全体の姿や枝振り、葉っぱの形、樹皮の具合などによって、それぞれに個性が感じられ、人間と同様に1つの個性をもった生命体と言えるでしょう。例えば、木を全体のシルエットで見た場合、新緑のシイやカシの仲間は、新芽がモクモクと吹き出し、いかにも山が笑っているように見えるので、遠くからでもよく目立ちます。街路樹の「ケヤキ」は、竹箒を逆立てたような盃形をしているので、これはもう一目瞭然です。一般的に広葉樹は、こんもりとした丸い樹形をしており、スギやヒノキなどの針葉樹は、先細りの円錐形になっています。葉っぱが扇形のイチョウは、いわゆる針葉樹ではありませんが、針葉樹と同じ裸子植物に属し、葉脈も平行に走っているチョットした変わり者です。樹形から見た場合、枝垂れ形(シダレザクラ)・楕円形(ソヨゴ)・卵形(コナラ)・傘形(タブノキ)・円蓋形(ヤマモモ)・株立ち形(アオキ)・不整形(イロハカエデ)などがあり、樹形は、樹木が作り出す外形や種類で分かる反面、生育環境などで変化したりして、同定に戸惑うこともありますが、それぞれが「名」は体を表していると言えるのではないでしょうか。
(安部泰男)
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