「サンズイの滴る木」
昨日まで大笑いしていた山々も、緑が一段と濃さを増し、山滴る(したたる)季節が巡って来ました。中国の山水訓の中で、夏の山は「鬱蒼として滴るよう」と表現しています。油山の樹木も、今を盛りに滴っています。滴る木と言えば、甘い樹液を出すクヌギやコナラ、イタヤカエデなどが思い浮かびますが、樹木名を漢字で表現すると、水の付く木に「水木」をはじめ、「熊野水木」などがあります。「サンズイ」の付く木も数々あれど、サンズイでの一文字は、漆(ウルシ)だけのようです。そこで「漆」という漢字を分解してみました。漆の山水偏は水を意味し、右側の旁(つくり)には、水も木も入っていますので、まさに滴る木の代表選手でしょう。漆の活用法は、なんと石器時代にまで遡り、接着剤として利用されていたとか?その後、人々の生活必需品として、漆の樹皮に傷をつけて生漆(きうるし)を採取し、バゼノキの果実で蝋を作り、ヌルデの虫癭(えい)を五倍子として利用しました。漆は江戸時代に、三草四木の1つとして栽培され、三草には、麻・藍・紅花または木綿があり、四木とは、漆・茶・桑・楮(コウゾ)のことです。油山におけるウルシ科の樹木は、ハゼノキ、ヤマハゼ、ウルシ、ヤマウルシ、ヌルデなどですが、全て羽状複葉となっており、葉の付き方や形状、繊毛の有無などから識別は容易に出来ます。油山には存在しませんが、木に絡まっているツタウルシ(蔦漆)のかぶれは強烈です!どうぞご用心下さい。(安部泰男)
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